
『トイ・ストーリー5』の惜しいポイント:ジェシーの葛藤とトラウマ克服は、なぜ「もっと時間をかけるべき」だったのか?
『トイ・ストーリー5』は、デジタルデバイス全盛の時代における「おもちゃの存在意義」に切り込んだ意欲作でした。
その中でも特に印象的だったのは、ジェシーが見せた人間味あふれるリーダーシップと葛藤です。
しかし、作品全体として非常に見ごたえがあったからこそ、ファンとして「ここをもう少し丁寧に描いてほしかった!」と感じる最大の惜しいポイントが存在します。
それが、かつての持ち主・エミリーとの思い出とトラウマ克服のシーンがあまりにもあっさりしていた点です。
1. ジェシーの魅力を引き立てた「不完全でリアルなリーダーシップ」
本作のジェシーは、完璧なヒーローとして描かれているわけではありません。
- ボニーに振り向いてもらえない焦りから、つい仲間に強く当たってしまう
- 自分の失敗に気づき、素直に謝罪して自分を見つめ直す
- 危機に直面した際、弱音を吐きながらも立ち上がり、仲間を引っ張っていく
このように、「感情的になってあやまちを犯すが、向き合って乗り越える」という非常に人間味のある泥臭い成長を描いた点は、間違いなく本作の素晴らしい見どころでした。
2. なぜ「エミリーとの再会・回想」があっさりしすぎていたのか?
ジェシーというキャラクターを語る上で絶対に外せないのが、『トイ・ストーリー2』で描かれた元持ち主・エミリーとの別れ(トラウマ)です。
大人になったエミリーに捨てられた記憶は、ジェシーの根底にある「捨てられることへの恐怖」の原点でした。
本作では、迷子になったジェシーが旧エミリーの家で埋められた箱を見つけ、大人になったエミリーが自分の娘に「ジェシー」と名付けて愛していた写真を発見します。
本作の展開における「勿体なさ」
- 演出のスピード感:写真一枚で一瞬にしてジェシーのトラウマが解決してしまうため、感情の溜めが足りない。
- 対比の浅さ:「ボニーに放置されている現在の葛藤」と「エミリーからの変わらぬ愛の確認」という最大の感情的ピークが、テンポ重視の展開に埋もれてしまっている。
『2』の名曲『When She Loved Me』とともに語られたあの深い孤独と傷を思うと、このエミリーとの思い出・愛の再確認の場面には、あと数分間時間をかけ、回想や心情のゆらぎを丁寧に描くべきだったと感じずにはいられません。
3. ドラマ性が深まれば「傑作」を超えた「神作」になれた
もしエミリーの思い出のシーンにじっくりと時間を使い、ジェシーが「手放されても、愛された記憶は消えない」と心から救われるステップを深く描いていれば、その後の彼女のリーダーシップやバズとの絆、そして決断はより一層説得力を増したはずです。
エンタメとしてのスピード感やハイテク・バズ軍団とのアクションも魅力的ですが、「おもちゃの心と傷」に深く寄り添うピクサーらしいエモーショナルな演出をもう少し見たかった――それが、本作に対する一番の「愛ある惜しいポイント」です。

